管理栄養士と栄養士の違い

栄養士というと、献立を作っているというイメージを浮かべる方も多いかと思います。
同時に管理栄養士というと、何となく栄養士を管理している人のような印象を受ける方も多いでしょう。

しかし、実際の管理栄養士は栄養士を管理しているわけではありません。
また管理栄養士と栄養士は、一緒の仕事のように感じられますが、明確な違いもいくつかあります。

管理栄養士と栄養士ではどのような違いがみられるのでしょうか?
今回は管理栄養士と栄養士の免許の定義から仕事内容、給料や資格取得の学校・費用など、幅広い項目から管理栄養士と栄養士の違いを解説していきましょう。

 

1.管理栄養士と栄養士の免許の定義

管理栄養士と栄養士はどちらも食と栄養のプロであることには変わりありません。
しかし、免許の定義からして異なります。

定義の違い

例えば、栄養士の場合、厚生労働省が指定した養成施設もしくは学校等の所定の単位を取得した人に都道府県知事が与える国家資格になります。

一方、管理栄養士というのは管理栄養士養成課程のある大学や養成施設を卒業後、国家試験を受けて合格した人に厚生労働大臣が与える国家資格です。

どちらも国家資格であることは間違いありませんが、栄養士の場合は都道府県知事が、管理栄養士の場合は厚生労働大臣から免許をもらうことになります。

管理栄養士は国家試験に合格しなくてはならない!

また、この他にも栄養士は栄養士免許に必要な単位を取って卒業すれば資格取得になりますが、管理栄養士は難易度の高い国家試験に合格しなければ管理栄養士になることはできません。

平成29年度に行われた第31回管理栄養士国家試験では、約1万9000人が受験し、合格率は54.6%という結果となりました。

難しい試験ではあるものの、管理栄養士養成課程新卒者だけの合格率を見ると92%と高いため、このような高い結果になったと考えられます。

2.できる仕事の幅・内容

続いて栄養士と管理栄養士では、できる仕事の幅や内容が多少異なります。
仕事の中でどこまでできるのか、見ていきましょう。

栄養士の仕事内容

まずは栄養士の仕事内容を見てみましょう。
栄養士は、主に食事管理・栄養指導を行います。

例えば、学校で出されている給食は、子どもが健康的に育つように栄養バランスに優れた食事内容となっています。

これを全て考えるのは栄養士です。

どうすれば食事をする人にとって適切な栄養バランスの食事になるのか、そしてより美味しく食べてもらうにはどうすればいいのかを常日頃から工夫をこらし、献立作成を行なっています。

栄養指導としては肥満の人など、食事管理が非常に大切な人に対して、どうすればバランスの良い食事をとることができるのかを指導します。

栄養士は多くの場合、献立を作るだけでなく調理員と一緒に料理を作ります
特に、現場に入りたての場合は調理に携わることで、どのような工程で調理が行われているのかを実際に感じ取ることができます。

栄養士は献立作成の時に、どのような流れで調理をすれば時間までに全ての調理を終わらせられるのかも計算して献立を作成しなくてはなりません。

ですから、調理現場に入ることもより効率の良い調理プランを作成するためには必要なことなのです。

管理栄養士の仕事内容

一方、管理栄養士の仕事は栄養士のように調理現場の方もいる中で、実際に行うのは栄養指導を中心としています。

もちろん、栄養士と同じように献立作成も行いますが、こちらは集団というより個人を対象にした栄養管理が多く見られます。

また、栄養士に比べてできる仕事の幅も広がります。
例えば、病気を患っている方に対してその人に合わせた栄養指導を行います。

一見、栄養士の仕事内容と変わらないように感じますが、管理栄養士は傷病に合わせた栄養管理を行わなくてはならないため、病気に関する知識や体に関する知識なども勉強しなくてはなりません

肥満など、健康リスクのある人に対しては栄養士も指導することができますが、管理栄養士は既に病気を患っている人に対して栄養指導を行えるのです。

また、現在医療現場では「チーム医療」が必要不可欠となっています。
チーム医療というのは、医師や看護師だけでなく、臨床検査技師や薬剤師など、患者一人に対しチームで治療していくことを指しているのですが、この中に管理栄養士も含まれ、患者の栄養管理及び指導にあたります

こうしたものは専門的な知識を要する管理栄養士だからこそできる仕事なのです。

管理栄養士は調理の現場に入ることももちろんありますが、どちらかと言うと栄養管理を重視した仕事を行うことが多いです。

こういった点も調理現場に入ることが多い栄養士と管理栄養士との違いの一つと言えるでしょう。

 

管理栄養士と栄養士には様々な仕事内容の違いがみられます。

もちろん、栄養士・管理栄養士という肩書きにこだわらず自分から仕事の幅を広げている人もたくさんいますが、例えば栄養士は病気を患った人の栄養指導や特別養護老人ホームなどの特定施設における栄養改善指導や給食管理を行うことはできません。

こうした違いも把握しておくようにしましょう。

3.働ける場所

管理栄養士と栄養士の違いの中で、働く場所も挙げられる項目ではないでしょうか?
今回は、それぞれが活躍する職場について紹介していきましょう。

管理栄養士が働ける場所

管理栄養士は、栄養士と異なるポイントとして、国家資格を持つ食の専門知識と技術が求められます。
働く場所としては、栄養士との違いに大差はありませんが、管理栄養士の方が適している職場というものも存在します。

【一般的な職場】

・学校
・保育園
・社員食堂
・病院
・福祉施設

【より専門的な知識や技術が求められる職場】

・行政機関
・事業所や工場、寮などの民間企業
・教育現場(管理栄養士育成養成機関など)
・スポーツ栄養における分野

このように、管理栄養士としての知識や技術が求められる仕事は様々なものがあります。

特に栄養指導や集団の食事やそれにおける栄養管理・指導などだけでなく、現場での業務の統括や労務管理などのリーダー的な役割が求められます。

また、特別給食施設においては、1回300食以上・1日750食以上を提供が必要な職場は管理栄養士の設置が義務付けられています

それ以上の提供が必要な場合も同様です。

管理栄養士として採用してもらうためには、その現場の人たちと協調性を持つことができ、食の専門家として活躍する見込みのある人材でなければなりません。

栄養士が働ける場所

栄養士が働ける場所としては、管理栄養士よりも若干少ないものの、ほとんど変わりはありません。

・学校
・保育園
・社員食堂
・病院
・福祉施設

前述したような管理栄養士のような専門的な知識や技術が求められる職場では、栄養士の働き口は少なくなっているのが実態です。

栄養士としての仕事は、栄養指導や食事の管理が一般的となります。
食事を管理すると言っても、調理の現場により近い仕事に携わることになるでしょう。

例えば、盛り付けや献立の工夫をする給食運営や、栄養指導も求められます。
また、1回に100食以上・1日に250食以上を提供する特定給食施設では、栄養士の資格を持つ人材が必要です。

働く場所に大きな違いはない

このように、管理栄養士も栄養士も、働ける場所に大きな違いはありません。
しかし、より専門的な知識や技術が求められる場所においては、栄養士よりも管理栄養士の方が求められ、人材募集も必要条件として明記されていることがあります。

働く職場に大差はないものの、働き方には違いが出てきます。

管理栄養士はより専門的な仕事内容であったり、現場をまとめる存在になりますが、栄養士はより現場に近い役割を担うということがわかります。

 

では、管理栄養士と栄養士の給料面や待遇に関してはどのような違いがあるのでしょうか?

4.給料や待遇

管理栄養士として働く場合と栄養士として働く場合には、給料面や待遇に大きな違いはあるのでしょうか?
ここでは、管理栄養士と栄養士との給料・待遇の違いについて紹介していきましょう。

給料・待遇の違いに不満が出ることも

管理栄養士も栄養士も、どちらもそれぞれ資格が必要な仕事です。
また、管理栄養士は栄養士よりも専門的な知識と技術が必要とされる仕事でもあります。

基本的には、管理栄養士は国家資格を持つ人材ということになりますので、その分基本給や職務手当などが栄養士よりも上がります。

基本給が上がることで、同時に賞与も上がりますので、給料には差が付くのが特徴です。
また、働く先によっては資格手当が付くこともあるでしょう。

一般的には、栄養士の給料にプラス5000円~20000円程となる場合が多いです。
管理栄養士として働いている人にとっては、栄養士とあまり変わらない給料面に仕事内容の割に合わないとの声を耳にすることもあります。

給料面だけでなく、残業や現場の調理師と気の合う職場であるかどうかもポイントになるでしょう。

働く場所によって変わる

管理栄養士と栄養士とでは、その職場によって仕事内容も変わりますし待遇も変わります。
より自分が納得できる給料・待遇のある職場を見つけることも重要となるでしょう。

また、管理栄養士として働く場合、栄養士以上に責任を伴う役割を担う必要があります
そのため、現場での経験をを積むことでステップアップすることもできるでしょう。

経験を積めば、独立して活躍することもできます。
自分の努力次第で、栄養士と大差ある収入を得ることも可能なのです。

待遇としても、上記で紹介した管理栄養士としての資格手当だけでなく、技術手当が付くこともあります。
研修制度や通勤手当、有給休暇などは働く場所によって違いが出てくるでしょう。

また、正社員として働くかどうかによっても状況は変わります。
より条件の良い職場を見つけられるように、仕事探しはしっかりと行うようにしましょう。

公務員で管理栄養士として働いたり、食品関係の有名企業で働くといった状況によっても栄養士との給料・待遇の違いは大きくなります。

学校の給食施設や保育園などの現場では、収入が若干低くなることもあるので、職場選びは重要と言えるでしょう。

5.資格取得のための学校や費用

栄養士と管理栄養士、それぞれは資格を取得するための学校から費用まで異なります。
栄養士もしくは管理栄養士を目指すのに、資格取得のための学校や費用は前もって知っておいた方が良いので、こちらもチェックしていきましょう。

栄養士を取得する場合の学校や費用

栄養士を取得するための学校は、2年制から4年制まで幅広くあります。
2年制の場合、栄養士専門の養成施設か短大で栄養士の資格を取得することができます。

また、費用も2年制であれば200~300万円、3年制になると250~350万円、4年制では350~400万円という具合に年数に応じて高くなっていくのです。

2年制と4年制では資格に関して大きな違いがあるわけではありません。
ただし、キャリアアップとして管理栄養士を目指す場合、この年数は関わってきます。

栄養士の資格を取得してから管理栄養士を目指す場合、管理栄養士養成施設で勉強をしなくてはならない、というわけではありません。

栄養士資格を取得してから実務経験が備わっていれば国家試験を受けられる資格がもらえます。
例えば、2年制の学校なら実務経験が3年必要であり、4年制の学校であれば実務経験が1年で受けられます。

4年制の学校は学費が高い分、早く管理栄養士国家試験を受けられる資格がもらえることになるのです。

管理栄養士を取得する場合の学校や費用

管理栄養士を取得する場合の学校は、主に管理栄養士養成施設もしくは養成課程のある大学などとなります。

多くの場合、4年制でありそのほとんどが学費500万円以上を超えるでしょう。
国家試験となるため栄養士のように夜間学校や通信教育などはありません。

通信教育があっても、それは決められた大学や施設を卒業したものの国家試験に落ちてしまった人向けのものとなるので、一から通信教育を受けることはできません。

高い学費ではあるものの、学校では管理栄養士に関する知識を一から学ぶことができるため、合格率は毎年90%前後と高い数値になっています

管理栄養士を初めから目指している人は、管理栄養士の養成施設や養成課程のある大学に通うようにしましょう。

 

管理栄養士と栄養士は一見似ているようで、実は様々な部分で大きな違いが見られることがわかりました。

どちらも仕事の内容や学校などが異なるため、どちらを目指すのか、資格の違いを理解した上で考える必要があるでしょう。

また、どちらも食・栄養のスペシャリストであることには違いありません。
管理栄養士と栄養士、どちらを目標とするのかしっかり選び、自分のライフプランを考えてみましょう。

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