管理栄養士は、単に栄養を計算して料理を作っていればいいというわけではありません。
専門的な知識・スキルはもちろん、それを活かすための能力や経験が幅広く必要になってくる難しい職業の一つでもあります。
では、管理栄養士に求められるものとは一体何かを考えていきましょう。
1.管理栄養士の仕事をしていく上で大切なもの
命に関わる仕事という意識
食品の栄養価など数字やデータと接することが多い仕事ですが、だからこそより意識しなくてはならないのが、人の命に関わる仕事をしているということです。
数値やデータばかりを意識していては、それは端的な作業となんら変わりません。
例えば、どれだけ栄養価が考えられている食事であったとしても、美味しくなければ食べてもらうことはできないでしょう。
当然、食べてもらえなかったのであれば、考えた栄養価やバランスには何の意味もなくなってしまいます。
食は人間が生きていく上では絶対に欠かすことのできないものですから、一見関係ないように感じたり、大げさに感じる人もいるかもしれませんが、命に関わる仕事である事は確かです。
命に関わる仕事であるということをしっかり意識できれば、自ずと管理栄養士がどうあるべきかが見えてくるのではないでしょうか。
常に学んでいかなければならない
単に美味しい食事を作るだけでは管理栄養士でなくともできますし、栄養価だけを考えられた美味しくない食事を作っても食べてもらえなくては意味がありません。
相手の体の事やライフスタイルを考え、それに合わせた栄養バランスで、美味しく喜んでもらえるような食事を提供できてこそ、管理栄養士としてプロと言えるでしょう。
昨日より今日の食事を、今日より明日の食事をより良いものにしていく為には、常に過去を振り返り、学んで次に生かす力をつける事も大切です。
2.幅広い知識・スキルがないと難しい
現代人の多様化するライフスタイルやニーズに合わせた食事を提供するのは簡単なことではありません。
食材それぞれの栄養価や特徴をしっかり理解し、それを生かすことができなければなりません。
そのためには、さらに人間的なスキルや仕事で生かすためのスキルがさらに必要になってきます。
求められているスキルと知識について、詳しく見ていきましょう。
食や栄養に対する専門的な知識
いかに多く深く、食材や食品に対する知識を持ち合わせているかは、もっとも重要な事でしょう。
ですが、食品学や栄養学といったものだけでなく、食の文化や環境の変化など、ありとあらゆる食に通じていく事も大切です。
他にも、携わる仕事の内容によっては、美容関係の知識や、医学的な知識などが必要になることもあるでしょう。
働く環境や、相手のニーズに合わせた様々な知識が必要になる管理栄養士は、なることも活かすことも難しい職業と言えます。
仕事としていく上でのスキル
管理栄養士は、その専門的な知識をしっかりと受け取り手に伝えなければなりません。
理解しやすいように話す会話力や伝える力はもちろん、相談内容や相手にとって的確な柔軟な発想力も必要になるでしょう。
また、メニューの考案や商品開発に携わる仕事であれば、企画を提案する力や、発言力も必要になってきます。
他にも教育の現場では、子供でもしっかりと理解できるように食育について学んだり、本やインターネット等で情報発信していくにも様々なスキルと知識が必要になります。
このように、管理栄養士としても働き方は様々ですので、それだけ知識や経験も多いほど良いでしょう。
とは言っても、これだけの知識を全て頭に入れる事は到底できる事ではありませんよね。
ですから、管理栄養士としてどういった方向に進んでいくのかを考えた上で、自分の得意な分野を身に着ける人が大半です。
3.体力・精神の強さ
責任が伴う仕事
管理栄養士は、国家試験合格者でなければ仕事として現場に入ることはできません。
働く現場において能力を発揮していくのですが、資格を取得するまでに学んできた知識や技術が無条件に発揮できるとは言い切れないのです。
働く現場によっては、自分だけでは判断できない状況に陥ることもありますし、無理な要求をされることもあるでしょう。
調理師は基本的に管理栄養士が決めた食事内容に沿って食事を作ります。
調理に使う材料や調理方法などの説明を調理師にうまく伝えなければならない責任も出てきます。
そこで必要になるのは管理栄養士としての専門知識ではなくその状況を受け入れる精神の強さです。
ストレスの多い職場でもある
自分が全体を担う管理栄養士だという誇りを持つことも大切ですが、困難に直面しながら切磋琢磨していくこともステップアップへの道につながっていきます。
どのような状況になっても、ポジティブ思考で進んでいくことは大切なことです。
これは管理栄養士だけに限らず仕事をする上で必要不可欠な要素ではないでしょうか。
勤務先によっては、調理師の人数が少なく調理現場に入ることも考えられます。
献立作成や発注業務などを任されることもあるでしょう。
忙しい現場であれば長時間立ちっぱなしで休憩もなく動き回らなければいけないこともあるでしょうし、勤務先の規模によっては大量の料理を作らなければいけない職場もあります。
そのためにも体力や忍耐力が必要になってきますし、何よりストレスに立ち向かう精神面も備えておかなければなりません。
さらに子どもから高齢者、病気の人といった個人に合わせた食事内容を提供するために、細心の注意を保ちながら努めなくてはならないのです。
管理栄養士の配置が一人の職場であれば、すぐにトップとしての立ち位置に扱われるので、それなりにストレスを感じることも多いことでしょう。
4.コミュニケーション力や連携を取ることも
管理栄養士は人に直接ケアする業務ではありませんが、一人では決して職務を終わらせることはできません。
ですから自分と自分以外との関係性を結ぶコミュニケーション能力は必要不可欠です。
伝え方一つで相手からの信頼度も変わってくる
必要な知識や情報を誤解なくわかりやすく伝えることは、相手の状況を把握することから始まり、相手に正確に伝えるために言い回しのスキルを満たす必要があります。
この伝え方一つで、信頼関係が大きく左右することは間違いないでしょう。
管理栄養士は、立場上人を動かしていく能力も求められます。
これは非常に高度なことですが、だからこそコミュニケーション能力が必要になってくるのです。
コミュニケーション力の重要性
多くの現場で迅速な対応・判断が求められることも多々あるでしょう。
その際により的確な判断をしどのように人を動かすかをリーダーシップを取って状況を進めていけなければなりません。
食事を作る場においては、調理師とどれだけ連携がとれているかも重要になってきます。
食事の提供時間も決まっているので、調理師は時間内に業務を終わらせるためにスムーズに指示を出してもらわなければ困るのです。
調理師の業務が遂行しやすい環境づくりを配慮することも必要になってきます。
調理師が気持ちよく働くことができれば、盛り付けや味付けなどの質を上げる余裕も出てきます。
結果的に「良い食事を提供する」ということに繋がっていくことでしょう。
また、管理栄養士は食事や栄養に関する相談にのることもあるので、伝える能力も問われます。
いくら知識を豊富に備えていても、それを相手にきちんと伝えることができなければ本末転倒です。
相手が望んでいることを十分に理解した上で、わかりやすく情報を発信できることも重要なスキルです。
伝える相手に対して前向きにとらえてもらうために発想力や柔軟性も高められると、より相手に伝わりやすくなります。
管理栄養士に求められるものをたくさん挙げてきましたが、実際にこれらを全て持っている管理栄養士の方が稀です。
最初は誰でも失敗してしまいますし、求められるものを持っていないことも少なくありません。
しかし、働きながら少しずつ習得していくことで、管理栄養士としてのステップアップにもつながるのです。
これだけ求められるものがあると大変…と感じてしまうかもしれませんが、最初から全て習得することを意識せず、働きながら少しずつ求められるものに応えられるようにしていきましょう。
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