管理栄養士の多岐にわたる業務の1つに、「栄養指導」というものがあります。
栄養指導とは医療・福祉施設や学校、行政、一般企業など、様々な職場において食事や栄養に関するアドバイスを行うことを指します。
今回は、管理栄養士が行う栄養指導の具体的な内容や、栄養指導を行える職場の探し方を解説していきます。
管理栄養士の数ある業務の中でも栄養指導に関心のある方は、ぜひ参考にしてみてください。
管理栄養士による栄養指導とは?
管理栄養士による栄養指導とは、食事や栄養に不安を抱えている方、あるいは病気で食事制限のある方などに対して、食事の内容や量、柔らかさ、調理方法など、多岐にわたってアドバイスを行います。
詳しい栄養指導の内容と、仕事の流れを以下で見ていきましょう。
栄養指導の内容
栄養指導の内容は、アドバイスの対象者や目的によって、以下の3つに大きく分けられます。
病気の予防や重症化を防ぐ栄養指導
未病の方や病気の重症化を防ぐために、食事療法を必要とする方に対して病状ごとに適切な食事方法や献立指導を行います。
入院中の方には食事療法に基づいた入院時の食事をお手本として、退院後も自身で栄養管理が行えるよう、食事に関する知識や調理方法をアドバイスします。
健康の維持や増進のための栄養指導
食生活に関する悩みや現状をヒアリングし、対象者が抱える課題や問題点に合わせた食べ方、調理方法のコツなどをアドバイスします。
対象者の性格や、生活習慣に合わせた食事計画を作成することが重要です。
年齢や対象疾患に合わせた栄養指導
加齢や疾患によって身体機能が低下している方は、特定の食材を控えたり、食材の柔らかさや栄養バランスに配慮したりする必要があります。
また、アレルギーなどに考慮した献立の提案、食生活のアドバイスも求められます。
栄養指導の基本的な流れ
栄養指導がどういった流れで行われるかは、指導する場所や対象者が個人か集団かによって異なります。
ここでは、病院で行われている栄養指導を例にご紹介します。
①栄養指導の予約を受ける
病院では、栄養指導は医療行為の一環とされているため、医師の指導のもと栄養指導が行われます。
まずは、医師の診察・診療を受けてから、医師が必要と判断した場合や、本人が希望した場合に栄養指導の予約を受けます。
②ヒアリング・初回指導
管理栄養士が、対象者のカルテや検査結果、普段の食事や生活習慣のアンケートやヒアリングをもとに原状を把握します。
初回指導の際は、患者に栄養指導の必要性を説明した上で、原状における問題点と設定目標を一緒に確認し、改善策の提案を行います。
③変化の評価と継続指導
初回指導で行ったアドバイスを実践できているか、身体検査の結果がどのように変化しているかを評価します。
栄養指導の継続を希望する方や、繰り返し指導する必要があると判断された方は、引き続き栄養指導を受けることになります。
Point
管理栄養士が栄養指導で活躍できる職場
管理栄養士が活躍できる職場は多岐にわたりますが、ここでは業務内容を栄養指導に絞ってみていきましょう。
福祉施設
障害者や高齢者向けの福祉施設において管理栄養士が行う栄養指導は、利用者の健康状態や身体機能を把握し、一人ひとりに合わせた栄養ケア計画を作成します。
そして、利用者本人及び家族の同意を得た上で、計画に基づいた食事を提供し、経過の観察と記録を行います。
時には、食事中の利用者を訪問して食事の様子や食べ残しがないかなどを確認し、問題があれば個別対応も検討します。
医療施設
管理栄養士が栄養指導を行う医療施設としては、病院や歯科医院があります。
病院で行う栄養指導は、特定の患者さんに対する個別指導と、糖尿病や腎臓病などの患者さんに対する集団栄養指導に分けられます。
個別指導では、患者さんごとにこれまでの食習慣などをヒアリングし、それぞれに合わせた実践法を相談しながら決めていきます。
集団栄養指導では各病態の基本を説明することで、食事療法への理解を深めてもらいます。
また、歯科医院でも生活習慣病予防などの観点から、口腔内の健康増進を目的とした栄養指導を取り入れる医院が増えています。
学校
保育園や幼稚園、小中学校における栄養指導では、児童に食育や個別指導を行います。
食育では、学校給食や教育活動全体を通じて、食に関する正しい知識と理想的な食習慣を身に付けてもらいます。
個別指導では、食物アレルギーや肥満を持つ児童とその保護者に対して、食生活に関するアドバイスをします。
栄養士または管理栄養士の資格保有者が、所定の教育を経て栄養教諭普通免許状を取得すれば、栄養教諭という働き方もあります。
保健所や地方自治体
保健所や地方自治体など行政で働く管理栄養士は、地域に住む人の健康づくりと食生活改善のサポートを目的に栄養指導を行います。
具体的には、乳児検診で保護者に離乳食に関するアドバイス、地域住民の健康相談、特定保健指導などです。
保健所では、健康診断や栄養指導事業などを通して収集した情報を調査・分析し、各地域における栄養や食生活の課題を明確にします。
美容サロン
管理栄養士が美容サロンで働く場合は、セラピストやカウンセラー、インストラクターといった肩書きで働くこともあります。
サロンの顧客へ食事や生活習慣を改善するアドバイスや栄養指導を行うほか、健康美容食品の販売も行います。
例えば、ダイエット目的でサロンに通う顧客に、栄養学の知識を活かして健康的な身体づくりのサポートをしたり、美肌目的で通う顧客に肌質や体質に応じたレシピを提案したりするなど、より高いサービスの提供に貢献できるでしょう。
店舗によってはサロンが主催するセミナーやイベントに登壇し講演を行うこともあるようです。
栄養指導が行える職場の探し方
管理栄養士の仕事は幅広く、職場によって業務内容が大きく異なるため、栄養指導に携われるかどうかは、職場選びが重要になります。
例えば、調理や献立作成がメインの職場に就職してしまうと、栄養指導を行う機会が全くないことも考えられます。
ここからは、管理栄養士として栄養指導を行える職場の探し方をご紹介します。
業務内容に栄養指導が含まれているかチェック
管理栄養士が多数活躍している職場の中でも、医療機関は栄養指導を求めていることが多いです。
特に、クリニックや総合病院では栄養指導を行う機会が多く見られます。
ただし、医療機関で管理栄養士を募集していても、職場によって業務内容は異なります。
「管理栄養士として絶対に栄養指導に携わりたい」という方は、求人の業務内容に栄養指導が含まれていることをしっかりと確認しましょう。
必ず栄養指導に携わりたいなら美容サロンもおすすめ
医療機関の管理栄養士でも、調理や献立作成がメイン業務だと、栄養指導に携わる機会が得られない可能性が高いです。
どうしても栄養指導がしたいという場合は、管理栄養士を募集している美容サロンもおすすめです。
Point
今回は、管理栄養士の多岐にわたる仕事の中でも、栄養指導に焦点を当てて解説してきました。
栄養指導は、健康な方から病気を抱えている方まで、一人ひとりの食生活の課題を見出し、改善に向けたアドバイスをする業務です。
栄養や食事に関する幅広い知識と、大きな責任をともないますが、その分目標を達成した時には、この上ないやりがいを得られるでしょう。
しかし、職場選びを間違えると、他の業務ばかりで食事指導をする機会が得られない可能性もあります。
どうしても管理栄養士として栄養指導に携わりたい方は、美容サロンで働くことも検討してみてはいかがでしょうか?