管理栄養士の仕事は、集団給食や病院食などの献立作成から食材の発注、栄養バランスのチェックなど、様々な業務を担っています。
その中でも個人や集団に対して行う食事指導・栄養指導は、健常者だけでなく病気の方に対しても行えるため、重要度の高い仕事の1つです。
今回は、管理栄養士が行う栄養指導についてご紹介します。
栄養指導が未経験でも管理栄養士の仕事ができるのかも解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
管理栄養士が行う「栄養指導」とは?
栄養士が行う栄養指導と、管理栄養士が行う栄養指導には違いがあります。
具体的にどのような違いがあり、どういった栄養指導ができるのかをご紹介しましょう。
健康の維持や増進を目的とした栄養指導
食生活の中で現在悩んでいることや不安な要素などをヒアリングし、その人に適した食べ方・調理方法などをアドバイスしていきます。
あくまでも健康な状態をキープすることを目的としているのが特徴です。
子どもや高齢者など、ライフステージにあった栄養指導
成長途中で体の小さい子どもと、すでに成長した状態の成人、様々な機能が衰え始める高齢者ではそれぞれのライフステージに適した栄養指導を行わなくてはなりません。
例えば子どもであればアレルギーに配慮した食事のアドバイスを送る必要がありますし、高齢者であれば嚥下機能や食欲の低下に配慮したアドバイスが必要です。
病気の治療や予防につなげるための栄養指導
医療機関で行われているような、病気を治療・重症化予防するための栄養指導は管理栄養士にしかできない仕事です。
それぞれの病状と患者の状態に合わせて栄養指導を行います。
例えば、糖尿病の人には炭水化物に偏ったメニューではなく、主食・主菜・副菜が整ったメニューを選んでもらったり、カロリーを減らすコツとして炒め物や揚げ物を減らしたりするなどです。
他にも、高血圧や関連する病気の場合は塩分の摂取量を低下させるためのアドバイスや、ミネラルを積極的にとることなどを指導します。
栄養指導といっても目的や行える範囲が異なることも知っておきましょう。
管理栄養士が栄養指導を行う際の流れ
実際に管理栄養士が栄養指導をする際に、どのような流れで行うのでしょうか?
医療機関で栄養指導を行う流れは以下のとおりです。
STEP 1
まずはよく食べるものや自炊派・外食派か、間食は1日にどれくらい食べているか、運動習慣はあるのか、など普段の生活習慣や食習慣についてヒアリングを行います。
同じ年齢・体型であっても生活習慣や食習慣は人それぞれです。
その人にあった栄養指導が行えるよう、最初にヒアリングをしておきます。
STEP 2
次に、なぜ食事療法が必要なのかを説明します。
医療機関で栄養指導を受けている方は、医師が「食事療法が必要」と判断したためです。
しかし、患者さんの中には「なぜ食事を改善しなくてはいけないのか」「病気とどんな関係があるのか」がわかっていない方もいます。
理解しないまま栄養指導を行っても、その人にとって重要度が下がってしまい適切な食事療法につながらない可能性もあるでしょう。
このようなリスクを回避するために、管理栄養士から食事療法がなぜ必要なのか丁寧に、わかりやすく説明していきます。
STEP 3
食事療法の必要性を理解してもらえたら、次は目標を決めていきます。
栄養指導では、最初から大きな目標を立ててしまうと挫折しやすいため、まずはできそうなことを上げてもらい、小さな目標として立てていきます。
Point
栄養指導は1回で終わらず、定期的に体の状態や食生活の状況をチェックすることで、さらにその人にあった栄養指導を提案していくことになります。
栄養指導未経験でも働ける?
管理栄養士の仕事において、栄養指導は大切な業務の1つです。
そんな栄養指導が未経験だと「現場で活躍できるのか」と不安を抱いてしまう方も多いでしょう。
結論から言えば、栄養指導が未経験であっても現場で働くことは可能です。
確かに栄養指導は大切な業務ではあるものの、それだけが管理栄養士の仕事ではありません。
献立作成や食材の発注など、他にもたくさんの業務があり、すべて管理栄養士にとって大切な仕事と言えます。
また、管理栄養士の資格を取得したばかりの人のほとんどは、栄養指導が未経験の状態で就職活動を行うものです。
こうした理由から、栄養指導が未経験でも就職に大きく影響することはないと言えます。
管理栄養士が栄養指導を行える現場とは?
管理栄養士は様々な職場で働くことが可能ですが、その中でも栄養指導を行っている現場は限られてきます。
具体的にどのような現場だと栄養指導を行っているのかご紹介しましょう。
医療機関
医療機関では患者さんに対する個別の栄養指導や、同じ病気を持つ方を対象にした集団栄養指導などを行います。
医療機関の栄養指導は病気を治療するために行われるものがほとんどで、管理栄養士だけでなく医師・看護師・薬剤師などと栄養サポートチームを組んで適切な栄養管理を行っていきます。
介護施設や福祉施設
高齢者向けの介護施設や障がい者向けの福祉施設などでも管理栄養士による栄養指導が行われています。
高齢者や障がい者一人ひとりの健康状態や身体状態にあわせて、適切な栄養指導と食事の提供を行うのが基本です。
管理栄養士による栄養管理・栄養指導は介護報酬の加算対象にもなるため、管理栄養士を雇用する施設も多いです。
保健所や地方自治体
保健所や地方自治体などで行われる栄養指導は、地域住民を対象とした健康増進を目的に行います。
行政に携わる管理栄養士の業務は、個人に対する栄養指導に加え、集団での栄養指導や栄養に関する講習会の実施、給食施設への栄養管理の指導・サポートなどが挙げられます。
栄養指導の種類も幅広く、例えば40〜74歳までの公的医療保険加入者全員が対象となる特定保健指導や、乳幼児健診における個別栄養相談などです。
他にも生活習慣を予防するための講習会や、離乳食を学ぶための教室を開催することもあります。
スポーツジム
近年はスポーツジムでも管理栄養士や栄養士を雇用する機会が増えています。
健康を維持・増進するためには運動だけでなく、食事面からのアプローチも必要となるためです。
スポーツジムで行われている栄養指導は、その人の目標にあわせて食生活や栄養の指導を行っていきます。
例えば健康的にダイエットをするためのアドバイスや、筋力を増量したい場合のアドバイスなどです。
他にも、その人にとって改善したい部分があればヒアリングし、問題を解消できるよう適切な指導を行う場合もあります。
美容関連施設
「内面美容(インナービューティ)」の考えから、美容において食習慣も重要なものと認識されてきています。
美容関連施設での管理栄養士は、内面美容のプロとして内側から綺麗になるためのサポートを行うのが基本です。
例えば普段の食生活をヒアリングして、どんな栄養素が不足気味になっているのか、肌のトラブルを抱えている人にはどんな栄養素を摂取した方が良いのか、などをアドバイスしていきます。
Point
今回は、管理栄養士が行う栄養指導についてご紹介してきました。
管理栄養士は栄養士と異なり、病気の人に対しても栄養指導を行えることが特徴です。
もちろん、健康的な状態を維持・増進するための栄養指導も行えます。
近年は様々な現場で栄養指導の重要性が高まっていますが、その中でも特に美容関連施設は注目したい業界です。
栄養指導が未経験であっても募集している施設は多いため、多くの人の美容と健康を支えたいと考えている方は、美容関連施設への就職を検討してみてください。