近年、私たちの生活に「ウェルネス」という言葉が浸透しつつあります。
ウェルネス=健康と捉える人も多いですが、実際にはより広義な捉え方をするものです。
今回は、そんなウェルネスの概念や近年注目を集めるウェルネス業界についてご紹介しつつ、管理栄養士がウェルネス業界に転職することは可能なのかどうか、解説します。
管理栄養士で転職を考えており、ウェルネス業界に興味を持っている方は、ぜひ参考にしてください。
ウェルネスの概念とは
まずはウェルネスとはどのような概念なのか、改めて解説していきましょう。
ウェルネスとは、1961年にアメリカのハルバード・ダン博士によって提唱された概念です。
最初の提唱では「輝くように、生き生きとしている状態」を指していましたが、現在に至るまで多種多様な解釈がなされ、結果として健康をより広く捉えた言葉として使われるようになっています。
例えば健康というと病気をしていない、肉体的な健康をイメージする方も多いですが、ウェルネスには精神的な健康も含まれます。
実際、WHO(世界保健機関)は健康を「肉体的・精神的および社会的に完全に良好な状態」と定義づけています。
つまり、ウェルネスは病気をしている・していないに限らず、QOL(生活の質)が高いかどうかが重視されているのです。
また、肉体的・精神的以外にも、社会的な地位や職業、環境などもウェルネスの指標に含まれています。
ビジネスで注目されるウェルネス業界
ライフスタイルに大きく影響するウェルネスという言葉ですが、近年はビジネスにおいても注目されてきています。
以下はウェルネス業界の中でも特に注目を集めている分野です。
パーソナルケア
パーソナルケアは、自分の体質や体調、特性を理解することで現状の問題点を解決するためにケアすることを指します。
一人ひとりに適したケアであり、美容や介護、健康など様々な業界と関連してきます。
マインドフルネス
マインドフルネスとは、今起きていることに集中する状態を指します。
過去の出来事や未来への不安を一度切り離し、今この瞬間の自分の心や体、周りの状況に集中することで、自己認識力が高まります。
マインドフルネスは瞑想や呼吸を実践することで、ライフスタイルに取り入れることが可能です。
健康食
以前から継続する形で、健康食ブームによるビジネスも数多く展開されています。
最近では1つの食材に注目するのではなく、総合的に栄養バランスの優れた食事をとることが重視されています。
例えば糖質や脂質、塩分に配慮された冷凍弁当のサービスなども増えてきました。
予防医学
医療分野は「病気にかかってから治す」のが基本ですが、予防医学の場合は病気にかからないようにするための医療を提供していきます。
例えば病気になりにくい体づくりをサポートし、健康の維持・増進を目指します。
少子高齢化社会の中で介護負担が大きくなっていくことも懸念されていることから、介護予防と関連する分野でもあります。
不動産
一見ウェルネスと関係のないように思える不動産業界ですが、ウェルネスでは環境も重視されることから、近年は「ウェルネス不動産」が注目され始めています。
ウェルネス不動産は、健康とQOLの向上を目指した設計や、自然との調和を取りつつ持続可能なデザイン、コミュニティや交流を促進する空間づくりを意識した不動産です。
住環境の改善によって、住民の健康や幸福度が高まります。
また、長期的な経済効果も期待できるでしょう。
ウェルネスツーリズム
ウェルネスツーリズムとは、スパやヨガ、瞑想、人同士の交流など、ウェルネスにつながるサービスを提供する旅行を指します。
旅行自体ストレスの解消効果が期待できますが、ウェルネスツーリズムを通じて新たな発見や自己開発の機会が得られたり、その地域特有のものや自然と触れ合うことで本来持っている免疫力を取り戻すきっかけになったりします。
健康経営支援
健康経営とは、従業員の健康管理をコスト管理ではなく経営戦略として捉えることで、投資や具体的な施策を行う経営手法です。
健康経営を行うことで従業員の離職率低下や生産性の向上などの効果が期待でき、これからの少子高齢化社会に向けた人材戦略につながります。
そんな健康経営を支援するサービスが増えてきています。
例えば健康診断の受診管理や労働時間などを管理する健康管理システムや、従業員のヘルスリテラシーを高めるための健康支援アプリ・プログラムの導入などがあります。
ウェルネス業界の市場規模はどれくらい広がっている?
ウェルネスは幅広い分野との親和性も高いことから、ウェルネス業界の市場規模は拡大傾向にあります。
世界の市場規模は、2020年から2030年にかけて4.4兆ドルから4.7兆ドルにまで拡大することが予想されています。
日本でもウェルネス業界の市場規模は2025年で約80.6兆円なのに対し、2030年には約89.6兆円、2040年には約86.4兆円になることが予想されています。
約86.4兆円という規模は、食品業界にも匹敵するほどの数字です。
これほどまでにウェルネス業界に対する関心が高まっています。
管理栄養士がウェルネス業界に転職することは可能?
すでに注目を集めており、今後も市場規模の拡大が予想されているウェルネス業界ですが、管理栄養士がウェルネス業界に転職することは可能なのでしょうか?
管理栄養士はウェルネス業界に転職することは可能
先ほどもご紹介したように、ウェルネス業界の分野として健康食などもあります。
管理栄養士は食事・栄養のプロフェッショナルということもあり、転職することは可能です。
また、管理栄養士なら臨床現場において一人ひとりに適した栄養指導を行うこともできます。
この技術を活かして予防医学の道に進むこともできるでしょう。
おすすめは内面美容!
管理栄養士はウェルネス業界において需要の高い職種になりますが、中でもおすすめしたいのが内面美容の分野です。
ウェルネスは自分らしく生きること、自己認識力を高めることも重視されています。
そのため、パーソナルケアやアンチエイジングなどもウェルネスの分野に含まれているのです。
内面美容(インナービューティ)は、体の内側から調子を整え、体の内側も外側も美しくなることを指します。
例えば温活や腸活なども内面美容に含まれます。
管理栄養士は、食事や栄養を駆使して体の内側からアプローチするための知識・技術を持った職種です。
体の外側を磨くエステや化粧品などでは難しい、体の内側から美しくなるためには管理栄養士のスキルが活用できるでしょう。
Point
ウェルネス業界に一歩踏み入れたいと考えている方は、内面美容の分野への転職も検討してみてください。
今回は、ウェルネスの概念やウェルネス業界について、管理栄養士の需要などについてご紹介してきました。
管理栄養士は栄養士と異なり、医療にも精通した食と栄養のプロフェッショナルです。
管理栄養士ならではのスキルを活かせば、市場規模を拡大させているウェルネス業界への転職も可能となるでしょう。
また、ウェルネス業界への転職を考えるなら、美容業界への転職がおすすめです。
特に内面美容の分野は注目度が高く、管理栄養士の需要も高いため、ウェルネス業界への転職を考えている方は、内面美容の分野にもチャレンジしてみてはいかがでしょうか?